削ると云う行為

ハサミを研ぐ、と云う行為が鋼材を削る作業である以上、ハサミが長い期間を経て薄く、また細くなっていくことは原理的に仕方のないことであります。

 

勿論、一回の研磨で目に見えるような変化はありませんし、形が変わってしまう様な研ぎは論外ですが…。

 

研ぎ師は皆、薄皮をめくる様にギリギリの処で研磨を施します。

 

では、長い年月を経たハサミはどのように変化し、どの様な影響が出てくるのか?

 

ハサミが薄くなる=裏刃が拡がってきます。(画像)

これによって、まず開閉感が徐々にそれまでの「シャッキリ」としたものから、「もっさり」とした感じになってきます。(言葉で表現するのはなかなか難しいですね…苦)

重量が軽くなってくることも関係しますが、その切れ味は、先端の方から硬さを含み、研いでも長くは切れない様になってきます。

 

ロングシザーの方が症状が顕著に出ることが多く、極端な症状では、毛を先端でつまんでしまったりします。

俗に「ハサミの力が無くなってくる」と言います。

 

また細くなるのもハサミの力も無くなるのですが、それ以上に、刃線の形が変化してしまう方が切れ味にとって影響は大です。

 

これは研ぎ師次第なのですが、研ぐたびに、その都度、新品の状態の刃線を想像しながら、形を整えていく…というのが正解でしょう。

 

それまでの刃線が「柳刃」であったのが、研いでいくうちに真っ直ぐな「直刃」になってしまった…などと云うことがある様です。

バランスは崩れ、切れ味は完全に変わってしまうことでしょう。

 

この様になったら、先詰め調整や裏スキなど、対処の仕方は色々在ります。いつも出している研ぎ師に相談してみましょう。

勿論、私に研磨させて頂ければ最善を尽くします。