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カット技術の革命

ハサミをプロとして使う全ての技術者、トリマーさんも含めて知らない人は少ないだろう…

ヴィダルサスーン。

 

「ハサミで世界を変えた男」

 

「カット技術を芸術まで高めた男」

 

「世界で一番有名な美容師」

 

彼を形容する言葉、賞賛する形容詞は尽きない。

 

何よりも彼の突き抜けた独創性…

 

彼が登場する以前の時代。おしゃれな女性はこぞってパーマをあて、髪を逆立て盛り上げ、スプレーで固めたヘアスタイルに悦に入っていいた。

 

まぁ、早い話がみんなが皆、「奥様は魔法使い」のエンドラの様なヘアスタイルだったわけである。(知らない人m(._.)m)

 

想像してもらいたい。

エンドラ婆さんだらけのロンドン・キングストリートの中、いきなりファイブ・ポイント・カットの女性が闊歩する光景を…

 

常識的な人々はびっくり仰天し、若者たちはそれに惹きつけられ熱狂したのである。

 

1960年代初頭と云えば日本ではまだ髪結いの時代である!?

ちろんサスーンの技術、その成功は一夜にして成されたわけではない。

ロンドンの貧しい家に生まれ、孤児院で育った。時は1930年代の恐慌時代であり相当な苦労をしたことは想像に難しくはない。

14歳からハサミを握り始めたサスーンは26歳で初めての店を持ち、徐々に成功を収めていく。

 

ミニスカートはブレイクし、ビートルズが誕生…1960年代の若者たちのアゲアゲの波に乗ったとも言える。

 

 彼のカットの特徴はとにかくシャープ・シャープ・シャープ。そしてジオメトリック。毛髪の流れ、頭の骨格、髪の伸びる方向を何よりも重視したデザイン。

 

そのカットを生み出してきたシザーはとても小さなものである。4.5インチほどの直刃の段刃。軽く、薄い。

 

サスーンは座ったお客の周りで踊るようにカットしていたらしい。そのスタイルに取り回しの良い小さなシザーはカット技術以上にマッチしていたとも言える。

 

私の研ぎのお客様の中でもビダルサスーンの看板を掲げているお店の技術者のシザーは大体このタイプであり、セニングシザーは殆ど使用しない処も多い。

 

研ぎ師として思うことなのだが・・・

 

サスーンはシザーの切れ味をとても重要視していただろうと思う。

繊細で、シャープで、狙った場所をイメージ通りにカットするにはハサミが切れなければ話にならないはず。

先端まで逃げずに切れるハサミ。

 

もしかしたら、サスーンさんが存在しなかったら、ハサミ研ぎの重要性は今よりもずっと低かったのでは無いかと思うくらい…

 

ヴィダルサスーンさんは2012年に亡くなった。

感謝。