飛込み営業

20年前にも勿論インターネットは存在した。

しかしながら、それが一般的に活用されていたかというと…

今と比べたら大学生と幼稚園児のようなもので、特に個人事業でホームページを運営するなど敷居の高いものだったと思う。

 

よって、美容サロンへの営業は専ら名刺と飛び込みのみだった。

今考えるともっと上手い方法が在ったのだと思うけど、当時の自分にはそれしか思いつかなかった。

 

住んでいた練馬区を中心に、中野区、杉並区、新宿区、そして渋谷区のサロン、1500店位に飛び込み営業を掛けた。

 

きつい仕事だった。

 

当然ながら営業相手はプロのサロン技術者であり、その対象は技術者が最も大事にしているプロシザーなのである。

簡単に仕事をさせてくれる訳もないのである。

 

しかも当時は今よりも出張でのシザー研磨は一般的ではなく、むしろ出張での研ぎに偏見を持っている技術者が大半だったような気がする。

(当時のこの様な考えには理由があるのだが、それはまたの機会に話す)

 

門前払いが多かったけど、今考えるととても良い思い出である。

 

初めて研ぎで収入を得た時の喜びは今でも忘れない。

大袈裟だけど、世界中が自分を祝福してくれているような気分だった。

「エミ」という小さなサロンだった。

カットシザーとセニング、合計2丁。

死ぬときに思い返すだろう思い出だと思う。