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変なハサミ

今まで何万丁ものハサミを研いできたが、稀に「構造的に無理」が在ると思うハサミに出会う。

 

シザーの構造は実に単純で、二枚の鋼材が中央の要のネジを中心に開閉し、合わさることによって物体を切る。

 

技術者が使うプロシザーは髪の毛を切ることに特化し、切れ味を追求したもの。

 

材質は勿論、刃線、刃角、裏スキ、反り、触点形状やロスト形状に至るまでその他あらゆる工夫がされ、またその精度は非常に高い。

 

単純だけど精密なのです。

 

しかし、その基本的な構造を無視したシザーの造りは途端に使い物にならない物になる。

 

画像のハサミは7,8年前から何店舗かで研いだのだが、全てトリマー様からの研ぎ依頼だったのでトリミング専用として販売しているのだろう。

ブレード部分に穴が開いている…

デザイン的なものなのか…

軽量化のためなのか…

これが問題である。

 

初めて研磨した時に、美しい裏刃と調整を終え、最後に試し切りをした処、何故か切れない…

 

何か失敗したのか?と焦ったが何度か良く観察した結果、毛を切った後に穴の中に毛が挟まる構造になっていた。

 

今も販売しているシザーだと思うので、写真ではメーカーが分からないようにしたが、外国製である。

 

勿論、私以外の研ぎ師なら切れるようになるかもしれないし、特殊な研ぎがあるのかもしれないが…

 

個人的に一つ言えることは、シザーは普通のデザインが一番だと思う今日この頃なのです。